広島支部からの寄稿−2009年冬 法輪精舎訪問記

  法輪精舎友の会・広島支部の佐々木です。私は大学でインドの子どもの教育の調査研究をしており、ここ10年ほどウッタルプラデシュ州調査の際、いつも法輪精舎に宿泊・滞在してきました。先の年末年始も調査のためサールナートを訪問しました。その際、友の会から『法輪精舎たより15号』関係の資料と皆様からのご寄付のお金を預かり、後藤住職の元へ届けています。
また、このたびはインド初経験の友人(楠掘氏)と二人でのサールナート訪問でした。帰国後、楠掘さんからは訪問についての感想(エッセイ)『暖かな日差し』を寄せていただきました。私も友の会の活動報告もかねて記録を書いてみました。私の訪問記は日記調です。楠掘さんのエッセイとあわせてごらんいただければと思います。サールナートの「今」が少しでも伝わると良いのだけれども・・・

ペンシル【12月26日(土) 出発】
午前10時前に同行者・楠掘さんと広島空港で落ち合い、ソウル・インチョン空港へ向かう飛行機に乗る。久々にソウル経由でのインド行きとなった。インディラガンジー空港にはインド時間の18:00頃に到着。いつもと変わらぬ出勤時間に家を出れば、夕方にはデリーにいるなんて知らないうちにインドも近くなったな、と感心しつつ、ニューデリーの安宿に落ち着いた。

ペンシル 【12月27日(日) 北インド冬の風物詩】
朝、国内線ターミナルに向かう。思っていたほど寒くないようでホッとした。寒さが心配なのは、気温というよりも、寒くなると北インドの冬の風物詩・コハラ(霧)が発生し交通機関が混乱するためである。
この日は、コハラもなくバラナシ行きの飛行機は遅れず出発した。実は1時間遅れではあったけれど・・・この程度であれば「定刻」のうちだろう。数年前、飛行機がコハラのため遅延し、デリーで夜まで足止めされたことを思い出す。
ところで、今回インドに到着して知ったのだが、デリーの国内線は新ターミナルがオープンしておりインドらしからぬピカピカの空港に様変わりしていた。これも、経済発展著しいインドの変わりゆく姿なのだろう。ちなみにバラナシの空港も今、新ターミナルを建築中である。
デリー空港
デリー国内線空港の新ターミナル

  バラナシにはお昼過ぎに到着。建設中の新ターミナルの脇にある古くて小さいターミナルに到着し、そのままタクシーで法輪精舎へ向かう。法輪精舎では、到着を待ってくださっていた後藤住職と一年ぶりの再会をし、早速、友の会・大塩さんから預かってきたご寄付のお金と『友の会便り』関係の資料を手渡した。
住職もお元気そうで何よりだ。これで、このたびのサールナート訪問の任務の半分を果たせたので、一安心。

ペンシル 【12月28日(月) 変わらないインドと変わりゆくインド】
今回の滞在はとても短いのでやるべきことは早々にしなくてはならない。早速、友の会から依頼された『友の会便り』掲載用の法輪精舎や学校の写真撮影をしようと思ったのだが、なんと今日はムスリムのお祭りのため学校は休み。
仕方なく写真撮影等は明日にして、調査打ち合わせのためバラナシの街に出かけた。街へ向かう道路は大渋滞。お祭り行列が道路を塞いでいるためだ。リキシャーやタクシーの運転手は商売にならない状態だったが、皆あきらめ顔。何事においてもお祭り最優先の伝統は健在のようで、経済発展のなかでも変わらぬインドを感じる。
とはいえ、変わりゆく風景も確かにあった。バラナシは道路事情がきわめて悪いが、今、道路の拡幅や高架化の工事が至るところで進んでいた。街からサールナートの間にも立派な道路が突貫工事で作られていた。
狭い通りの脇に露店が並び、車、バイク、自転車、リキシャー、牛・豚・ヤギ・犬などいろんな動物で混み合う通りの風景は、もしかしたら見ることができなくなるのかもしれない。
街
バラナシの雑踏

ペンシル 【12月29日(火) 法輪精舎の学校のこと、滞在のお楽しみ】
朝から学校を訪問し写真撮影をする。お目当ては増築中の校舎だ。
ほぼ完成していた校舎を見て少し気になったのは新校舎のため校庭が狭くなったこと。休憩時間に子どもが飛び回って遊ぶにはもう少し広いグラウンドがあった方がよいのに。このことは、後藤住職や学校のスタッフの皆さんも気にかけておられた。
だが、今、サールナートは「土地バブル」のため、簡単に学校の敷地を広げられないとのこと。学校の副マネージャー・アニールさんから、隣接する空き地の値段を聞いて納得した。20メートル四方くらいの土地で、日本円にして一千万円近くもし、今後もどんどん値上がりするらしい。これではたやすく買えないし、持ち主もなかなか手放さないだろう。
しかし、校舎増築のおかげで高校の政府認可の見通しが立ったという、うれしいニュースもあった。認可がとれれば法輪精舎の学校は、既に認可を受けている中学校を加えて完全に政府公認の私立学校となり、将来的には政府からの補助金を受ける可能性も開けたからである。
増築中
学校の近況を説明してくれた副マネージャー・アニールさん

  お昼に法輪精舎に戻り、後藤住職と『友の会たより』編集の打ち合わせをした。これで、友の会から頼まれた任務は終了。ただ、もう一つの仕事(滞在のお楽しみ?)がある。
それは、後藤住職のために食事を作って差し上げることだ。例年必ず一度は、住職が普段作らない「珍しい」料理を作ることにしている。スパゲッティ、ハンバーグ、餃子、トンカツ、ガンジス河のナマズや鯉を使った料理等々、いろいろレパートリーがあるけれど、このたびは豚肉があり、新ジャガのシーズンだったので肉コロッケを作ってみた(ちなみに、インド仏教の僧侶は肉食可)。
コロッケは我ながら大成功。夜は、コロッケ定食パーティとなった。後藤住職は満足していただけただろうか?
トンカツ
コロッケの写真は撮り忘れた。写真は数年前のトンカツ定食

ペンシル 【12月30日(水) デリーヘ】
今日で短い滞在も終わりだ。早々に荷造りをし、住職と早めのお昼ご飯を食べ、デリー行きの夜行列車に乗るためにバラナシの駅に向かう。 ここのところ数年に渡って後藤住職と一緒に大晦日を過ごしてきたが、今年は残念ながら年越しはデリーとなった。サールナートの皆さんとお正月を迎えられないことはとても残念で、また、これはいつものことであるが、皆さんと別れるのはとても名残惜しい。
今度は、いつサールナートに来ることができるのだろうか。後ろ髪を引かれる思いで、デリーへ向かった。次回も後藤住職ほか皆さんの変わらぬ笑顔に出会えますように! 
列車
デリー駅。帰路は霧のため4時間ほど到着が遅れた

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